ホタルを観察して考えたこと(1) 投稿者:古屋2組(軽井沢)  投稿日:10月31日(木)01時00分14秒

 皆さんの議論とはまったく関係ないですが、この場をお借りしてホタルの生態に関する発表をさせてください。
1.勇者と臆病者
 発地ホタルの里ではゲンジボタルが自然発生している水路が数箇所あります。
 それぞれ、10−50匹ぐらい発生します。
 そのオスを観察していると、約1割のオスは自分が発生した水路から離れ、あちこちをさまよっているように思えます。
 残りはかたくなに自分の生まれた水路(わずか1−200メートル程度の範囲)を行ったり来たりしているようです。
 (冒険に出た)1割の勇敢なホタルはおそらくそのほとんどがのたれ死にするものと思われます。でも希な確率で隣の発生地にたどり着いて、メスと出会うかもしれません。そこでの交配は丈夫な子孫を残すことになるでしょう(近親交配が避けられるので)。つまり、ハイリスクハイリターンという訳です。
 
 このようにして時々は遠縁の遺伝子を取り込んで、近親交配の弊害を避け、遺伝子の多様性を維持しているのかもしれません。
 ところでもし、オスのすべてが勇猛果敢で、自分の水路を離れて行ってしまったらどうなるでしょう。あっというまにその水路からホタルが絶えてしまうでしょう。
 オスの9割のホタルは地道に(確実に子孫を残せる)自分の生まれた水路でメスを探し、交配して子孫を残すようです。
 ホタルの場合、1割の勇者と9割の臆病者がいて種を維持できるのだと思います。

 人間の世界でも、臆病と言う資質は、実は人類が生き残る上で重要な役割を果たしていると思います。

 ところで、会社の経営も同じことが言えるのではないでしょうか?
 本業はしっかり固めて、でも少しはなにか新しいことにチャレンジして、失敗しても失敗しても新技術を先取りして行かないと生き残れないと思います。

 次回は「劣等性が生き残ったホタルの生存競争」というテーマです。


ホタルを観察して考えたこと(2) 投稿者:古屋2組(軽井沢)  投稿日:10月31日(木)17時42分48秒

2.「劣等生が生き残った」ホタルの生存競争
 昨年私はゲンジボタルのオスとメスを捕まえて卵を生ませ、孵化した幼虫を羽化するまで育てました。
 孵化したばかりの幼虫には生まれたての小さなカワニナを与えました。幼虫の目の前に餌のカワニナをおいて、どうやって食べるのかをじっと観察してました。
 カワニナは、ホタルの幼虫が近付くと、体全体をくるくる回して、幼虫を追い払うような動きをしました。
 ホタルの幼虫、容易にはカワニナにとりつくことができません。
 そこでカワニナの尻の部分の殻を割ってホタルの幼虫に与えたところ、無事食べるようになりました。

 ホタルの幼虫は、キズのない元気なカワニナを簡単には捕まえられないようなのです。
 私は、ホタルの幼虫は狩がすごく下手なのではないかと思いました。そしてなんでこんなに狩が下手なのだろうと。

 おそらくホタルの幼虫は自然水路においては、弱ったカワニナを食べ、元気なカワニナには手を出せないのではと思います。そしてそれがカワニナだけを餌とするゲンジボタルにとって、種を維持する最適な戦略なのだと思いました。カワニナを食べ尽くせば自分も絶えてしまうのですから。

 でも、何億年(?)もの間、狩が上手な優等生は現れなかったのでしょうか? 私はそういう優等生が現れたことがあるのではと考えています。でも(10年ー20年単位では)ホタルの生息域は狭い地域に限定しているので、その地域のカワニナを絶滅状態にさせてしまい、その結果自分も滅びたのではないかと思います。
 そして今まで生き残ったのは、狩が下手な「劣等生」だったのだと思います。

 このような事例はいろいろあるようです。ライオンが狩が下手なのも同じことが言えるのかもしれません。
 草食動物も(別な仕組みかもしれませんが)草を根こそぎ食べることはせず、次のシーズンには芽が生える程度に一部を残しておくそうです。

 マンモスを滅ぼしたように、食い尽くすのは人類だけかもしれません。


 ところで、昨今の経済のグローバル化は、「優等生」が地域を限定せず、全地球上に勢力を及ぼしはじめた危険な状態ではないでしょうか?

次回は 「健康不良児が絶滅を救う」 です。


ホタルを観察して考えたこと(3) 投稿者:古屋2組(軽井沢)  投稿日:11月 1日(金)15時32分08秒

3.発育不良児が絶滅の危機を防ぐ

 ホタルの幼虫にカワニナを与えて1−2ヶ月もすると発育のいい幼虫といい幼虫の差が目立ってきました。餌不足かなと思い、多めにカワニナを与えても、その傾向は直りませんでした。 
 あるときインターネットで、ホタルの幼虫は、1年で十分発育できなかった場合、2年あるいは3年かけて羽化することがあるっていう研究結果を見つけました。まあ、そのときはそういうものかって思っただけでしたが。

 ところで今年の7月、発地ホタルの里ではゲンジボタルが舞い、卵をホタル水路の岸のミヅゴケに産卵するのが見られました。ところがその何日かあと台風が近付き、卵を産みつけたミヅゴケが水面下に没したり、コケがはがされて流れてしまいました(7/10の日記ご参照)。
 まあ今年の場合、人工孵化した幼虫をこのあと放流したので絶えることはないと思いますが。

 でも、自然の状態だったらこのような場合、絶えてしまうのでしょうか?
 こんなときの救世主が発育不良児です。今年の卵が全滅したとしても、去年、あるいはおととし生まれた発育不良児が来年羽化し、命脈を保ってゆくと言うわけです。

次回予定:ホタルのメス、強いオスを選ぶ?! 


ホタルを観察して考えたこと(4) 投稿者:古屋2組(軽井沢)  投稿日:11月 2日(土)22時59分46秒

黒坂さん、コンサートの件、すいませんでした。
日程を仮押さえまでしておきながら、ホタルの里でのコンサートを実現できず、ほんとにすいませんでした。もう少し発生数を増やして、地域の意気が上がったらきっと元気が出ると思います。そのときまで待ってください!

ところで、ホタルの生態についての続編を書かせていただきます。

4.ホタルのメス、強いオスを選ぶ?!
(今までも、今回も僕の勝手な解釈なので、皆さん疑ってかかってね!)

 
 ホタルのメスとオスの出会いは、オスとメスが互いにちょっとリズムの違う光を発し、相手を見つけるというものです。
 オスは、メスを見つけやすいように、一斉に同期して光らせるっていう話も聞きました。

 なにかおもしろい話を期待した向きには申し訳ありませんが、メスが特にオスを選ぶっていうことはしていないみたいなのです。
 オスも、縄張りを守って戦うというような事はなく、皆、水路上をいったりきたりしています。
 結局、先にメスを見つけたものの勝ち、というような気がします。

 でも、ほんとうに健康な強いオスを選ぶ仕組みがないのでしょうか?

 ちょっと気になる生態がホタルにはあります。

 ゲンジボタルはメス一匹で500個ほど卵を産みます。そのうち羽化するまで生き残るのは1パーセント程度です。そのオスとメスの比ですが、オス3に対しメス1の比率で、圧倒的にオスが多いのです。
 また、メスはオスより7−10日遅れて羽化します。
 
 このことは何を意味するのでしょうか?

 オスにとって、メスを獲得できる確率は30パーセント程度です。やはり、なんらかの形で「強い」オスが選択されていると思うのです。それはなんでしょう?
 さて、羽化したホタルの寿命は1−2週間程度といわれています。そして(メスはオスより1週間も遅れて羽化するので)オスはもう寿命が尽きる頃になってやっとメスに出会えるのです。
 体に欠陥を抱えたり、健康不良のオスはメスに出会う前に力尽きてしまうのかもしれません。

 結局、オスより1週間遅れて羽化することで、メスは強いオスを選んでるのではないかと私は思います。


ホタルを観察して考えたこと(5) 投稿者:古屋2組(軽井沢)  投稿日:11月 3日(日)18時11分08秒

今回で終わりです!
いままで読んでいただいてどうもありがとう。
のこキティーさん、黒酢のことありがとう。試してみます。

 では最後に私の「とっておき」のお話です。

5.ホタルのメス、頑張る!

 これは私のとっておきの話です。もしかしたらまぼろしなのかも知れませんが。
 この「頑張るメス」を発見したことが、ホタルにのめりこむきっかけの一つです。

 昨年の初夏のことですが、ヘイケボタルのメスをさがしていました。つかまえて、卵を採集するためです。
 そんなときです。「頑張るメス」を見つけたのは。


 ヘイケボタルもやはり、オスはその発生数がメスより3−4倍多く、また1−2週間早く羽化します。
 ヘイケボタルのオスはゲンジボタルより行動範囲がどうも広いようです。広い草原で車を止めてウィンカーを光らせると、はるかかなたから集まってきます(ホタル観賞にくるお客さんがそういうことをして、結果として繁殖の邪魔をして困るのですが)。
 逆にいうと、メスの立場からすれば、メスが羽化したときにはオスはどこかに舞って行ってしまってるのかもしれません。
 「頑張るメス」を見つけたときもそんな状況だったような気がします。

 そのメスは、オスを呼ぶために、(産卵をひかえているので)あまりエネルギーを使わず、でももてる武器(おなかの発光器)を最大限有効に使うよう努力していました。

 そのメスはウドの高いところの葉にとまっていました。葉に「仰向け」になって、必死に!
 その姿勢、確かに、おなかの光をもっとも効率よく遠くまで届けます。


 その様子を写真に撮っておけばよかったのですが、話してもだれも信じません。僕は確かにそういうメスを2例見たのですが。
 そして、今年こそ写真に撮ろうと探したのですが、見つかりませんでした。
 まぼろしに終わるかもしれません。



6.終わりに
 僕は学生時代に「情報理論」を学びました。「情報理論」には2大理論があり、1つは「あいまいな状態」を定式化するものです。化学でいう、エントロピーの理論です。もう一つはシステムの「無駄」を取り扱うものです。「冗長度」として「無駄」を定式化します。そして、その「無駄」がシステムの信頼性(あるいは安定性)を格段に向上させることを示しています。
 そんな思想を頭の片隅に置いてホタルの生態を見つめてみました。

 第1回目の「勇者と臆病者」では、ホタルにも個性があり、その個性の多様性が種の存続に重要な役割を持っていることを示しました(このような個性に着目した生態学はまだ少ないように思います)。
 また2−3回目では、落ちこぼれが、実は種の存続の危機のとき重要な役割を果たすことを示しました。

 今生き残っているすべての種の「無駄」と思える生態は、きっと無駄でなく、種の維持に重要な役割を持っているものと確信しています。


ホタルの考察補遺 投稿者:古屋2組(軽井沢)  投稿日:11月 4日(月)23時48分23秒
 僕の考察は、ホタル物語ぐらいに思っててください。
 昆虫の専門家と議論したこともあるんだけど、次から次へと反対意見が出てきます。実際、厳密に証明するのは研究を職業とする人でないと出来ないような気がします。
 たとえば勇者と臆病もののところでは、ある研究者から、発生するすべてのゲンジボタルにマーキングを行い、その追跡調査をして見ないかと提案されました。でもそんなことやってられません。
 また、狩下手の件、単に餌との遭遇の確率の低さが原因ではないかという反論もあります。
 ましてや、かつて狩の上手なホタルが出現して、でも絶滅したなんてこと、証明できそうにありません。
 また、発育不良児は、単に絶滅の危機の時だけ役立つのではなく、常時なんらかの役割を負っているかもしれません。たとえば発生数を平滑化し、遺伝子の多様性を維持する役割とか。

 
 発地ホタルの里でオオジシギが繁殖してますが、この生態がよく分かっておらず(特にオスとメスの関係、一夫多妻なのか一夫一婦なのかレックなのか)その生態研究を今年の5−7月ごろにかけて研究していた人がいましたが、2−3ヶ月毎日草原に張り付き、車で寝起きして調査してました。そのくらいにしないと厳密な調査ができないのではと思います。




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